福祉施設のクリエイターに作品使用料をどうお渡しするか──konstが決めた還元のルール

渡部 忠

※ここでご紹介するのは、軽井沢町社会福祉協議会(以下、軽井沢町社協)とkonstの協働事業「アート・あぷりえ」における取り組みです。他の案件や団体にそのまま当てはまるものではありません。福祉施設のクリエイターの作品を活用される際は、それぞれの状況に合わせてご検討ください。

払う意思と、届く仕組みのあいだ

私たちは福祉とデザインのあいだで仕事をしています。障がいのあるクリエイターの作品に使用料をお支払いすること自体は、今や多くの企業に認識されています。そのため最近、ご相談の内容が変わってきました。「払うことは当然だとわかっている。では実際に、そのお金はどうクリエイター本人に届くのか」——そこを知りたい、というご相談が増えています。

依頼する側には「きちんとお金を払いたい」という気持ちがあります。しかし、お金を渡す先である福祉施設には、賃金(工賃)の仕組みや支援の体制など、外からは見えにくいさまざまな事情があります。「払う意思」と「届く仕組み」のあいだを、どうつないでいくか——それが実践的な問いとして残っています。

障がいのあるクリエイターが参加する創作ワークショップを企画・運営しているのは一般社団法人konstです。参加するのは、軽井沢町内に住む障がいのあるクリエイターの方々です。軽井沢町から「障がいのある方の社会参加・就労の機会確保事業」を受託している軽井沢町社協が呼びかけ役となり、各事業所から参加者が集まってワークショップを行っています。軽井沢町における活動は、軽井沢町社協とkonstの協働事業「アート・あぷりえ」として進めています。

権利のあり方について

konstは軽井沢町社協との契約に基づき、プロダクト開発や企業への使用提案を直接担っています。作品の活用にあたっては、軽井沢町社協との合意のもとで進めており、活動の目的(社会還元とプロダクト開発)の範囲内に限定されています。

この取り決めは、軽井沢町社協が各事業所に内容を説明し、同意を確認した上で行っています。参加するクリエイターの方々への意思確認は、日々の生活をともに過ごす支援員と事業所が、意思決定支援の観点から個別に丁寧に行っています。本人が主体であることを前提に、事業所と軽井沢町社協が連携して契約手続きを進める形をとっています。

「全員に届ける」という選択

ワークショップで生まれた原画が使用されたとき(プロダクトの柄として使用するとき、原画そのものが購入されたときなど)は、参加したクリエイター全員が還元の対象になります。

konstのワークショップは、特定の個人が独立して作品を制作し、それを評価・採用するスタイルをとっていません。個々の表現を大切にしながらも、ワークショップという創作の場そのものをひとつの共同制作の営みとして捉えており、そこに集まったすべての人の関わりや響き合いが価値を生み出したと考えています。

参加の形や関わり方がそれぞれ異なる方にも、等しく還元が届くようにするためです。どの原画が採用されたかにかかわらず、ワークショップという場に関わったすべての人が還元の対象になります。個人の優劣による配分ではなく、「その場を共有し、共に創作の場を創り上げたこと」への対価——そういう新しい還元の形を模索しています。

作品の種類ごとに、売上から一定の割合を還元するルールを定め、軽井沢町社協との契約に基づいて各福祉事業所へお届けしています。割合は案件の性質(プロダクトの種類、販売規模、使用形態など)によって個別に設定しており、契約時に軽井沢町社協へ明示しています。

作品の使用料は、一般的に一括払いで支払われることも少なくありません。konstが販売実績に応じた定期的な還元方式を選んでいるのは、プロダクトが売れ続ける限り還元も続けることで、クリエイターの創作が長く社会とつながり続けることに意味を持たせたいからです。

お金の流れも明確にしています。konstは販売実績を定期的にまとめ、内訳を軽井沢町社協へ報告した上で、還元金をお支払いします。軽井沢町社協はその還元金を、各福祉事業所へ届けます。

なお、還元後に残った売上は、次のワークショップの企画・制作費、デザイン開発費、運営管理費など、この活動を継続するための事業費用として運用しています。

現場の判断を尊重する

各事業所への還元金は、軽井沢町社協がクリエイターごとの参加回数に応じた配分額を記載した通知文を作成した上で、事業所へ一括でお渡しています。これにより、誰にいくら届けるかが明確になった形で各事業所に引き継がれます。

配分額はクリエイターごとに通知文で明示されているため、受け取るべき額がクリエイター本人に伝わる形になっています。各事業所が、それぞれの運営方針や制度上の要件に沿った適切な形で対応してくださっています。日々の生活や支援の様子を最もよく知る現場の支援員の皆様が、クリエイター本人にとって意味のある受け取り方を選んでくださっています。

お金の決め方は、関係の決め方

konstの方法はひとつの例ですが、還元のかたちは世の中にさまざまあります。売上の一部を施設に寄付する方法もあれば、本人へ直接報酬・謝礼の形でお届けする方法もあり、施設の方針や本人の状況に合わせて選ばれています。

konstはkonstのルールを契約書に基づいて誠実に運用することを基本としながら、関わる全員にとって意味のある形を継続的に探っていきたいと考えています。

見えないところの仕事をどう扱うか

お金の渡し方を考えるとき、もうひとつ忘れてはならないことがあります。作品の背後には、支援員の皆様の仕事もあるということです。施設のスタッフは、創作できる環境を整え、外部との調整を行い、クリエイターのそばで創作を支えてくださっています。こうした見えにくい仕事が、商品が生まれるための大切な土台になっています。

作品の使用料とは別に、施設の運営そのものを支援する形を選ぶ企業や団体もあります。作品への対価とは性質が異なりますが、創作の場への敬意を形にする関わり方のひとつです。そうした選択肢を知っておくだけで、お金のやり取りの意味が少し変わってきます。

渡し方はいろいろあっていい

お金だけが還元の形ではありません。もちろん、金銭的な対価はその前提として必ずあります。それに加えて、たとえば完成したプロダクトを施設に届けることで、本人や支援者が成果を実感できる機会をつくることができます。パッケージにアーティストの名前を載せて、社会的な知名度を広げることも、ひとつの返し方です。

ただ、こうした関わりはあくまで、金銭的な対価に加えるものです。konstは、福祉施設のクリエイターも、依頼するカメラマンやコピーライターと同じく、創作の主体であるひとりのクリエイターとして接しています。

お金と、それ以外の関わりが組み合わさってはじめて、バランスのとれた関係が生まれると考えています。還元の方法は、案件ごとに違っていいと思っています。むしろ、そのたびに考え直すことが、関係を続けていく力になります。

私たちは、この分野の唯一の正解を持っているわけではありません。ただ、決めたルールを誠実に守りながら、軽井沢町社協や各事業所との対話を重ね、よりよい関わり方を継続的に考え続けています。還元について考えることは、誰の創作を、どのように長く社会に届けていけるかという問いと向き合うことでもあります。そのプロセス自体が、福祉とデザインのあいだに立つ者の仕事だと思っています。