クリエイターの原画を商品にするとき、何を残して何を変えるか
商品化の前提 何をデザインするかを共有する
僕らがワークショップを行う際には、デザインする対象(ワークショップで創作する原画を何に応用するか)が決まっている場合もありますし、決まっていない場合もあります。
今回は、デザインの対象があらかじめ決まっている場合のお話です。
クリエイターの原画を商品に落とし込むとき、何をどこまで変えてよいか、あるいは変えてはいけないか。そのさじ加減は、関わるすべての人が同じ前提を共有しているかどうかにかかっています。
体験から始まるワークショップ
まず大切にしているのは、ワークショップの目的を参加者にきちんと伝えることです。
例えばコーヒーのパッケージをデザインする場合、実際にコーヒーを目の前で淹れていただき、その香りや味を五感で体験してもらいます。説明してもわからないと諦めずに伝えるという姿勢、想いが信頼関係を構築するために重要だと僕らは考えています。
言葉で「コーヒーらしさを表現してください」と伝えるより、体験から入るほうが、参加者それぞれの内側から自然なイメージが引き出されます。商品の目的と人の感覚をつなぐことが、最初の大切なステップです。
抽象と具象、表現方法に合わせた設計
次に、原画をどのように描いていただくかを考えます。
抽象的な表現が求められる場合は、香りや味を表現しやすい道具や画材を用意します。
一方、花のような具象的な表現が必要な場合は、具象表現が得意な方も不得意な方もいらっしゃるため、ワークショップ前にあらかじめ花の絵を描いていただき、当日はステンシルの型抜きを用意して、全員で彩色するという方法をとることもあります。
このように工程を分業することで、参加者全員ができる限り創作に関われる場をつくっています。
すべての表現を美しいものとして受け取る
そして最も大切にしているのは、ワークショップが始まったら、生まれるすべての創作物が美しいことを前提として創作を見守るということです。
そうすることで、僕らが事前には想像できなかったような豊かな表現に出会うことができます。参加者の個性や偶然性が生む表現こそが、商品に宿る固有の価値になると考えています。意図しない美しさを排除せず、むしろ迎え入れることが、クリエイターの原画を商品にするうえで欠かせない姿勢です。
ブリコラージュという思想とデザインの新しい意味
これはレヴィ=ストロース
※1の「野生の思考」
※2を参考に考えると、より深く理解できます。
野生の思考は、ありあわせの素材を使って物をつくるブリコラージュ※3に例えられます。デザインに置き換えれば、あるデザインを考えるとき、そのデザインの目的と他の事象との間にある関係——たとえばワークショップで生まれた、当初の意図とは少し異なる美しい表現——に注目することで、見る人の連想を誘う可能性が生まれます。
その行為によってデザインに新しい意味が加わり、新しい「モノの捉え方」が生まれます。コーヒーのパッケージであれば、それがコーヒーの新たな魅力を伝える、クリエイターならではの優れたデザインになるのです。
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※1 レヴィ=ストロース:Claude Lévi-Strauss(1908–2009)。フランスの文化人類学者。構造主義の父とも呼ばれる。
※2 「野生の思考」:1962年刊。未開社会の神話・呪術的思考が、西洋近代の科学的思考と対等な知性の体系であることを論じた主著。
※3 ブリコラージュ:ありあわせの素材や道具を使って物をつくること。転じて、既存の素材を組み合わせて新たな意味を生み出す創造的行為を指す。