楽しい創作が、土地のものに育っていく ― KARUIZAWA TROLL のこと
konst の新しいプロダクト「KARUIZAWA TROLL」ができました。軽井沢町の福祉施設に通うクリエイターたちが切り絵でつくった、想像上の「軽井沢の生き物」を、長野県中野市に伝わる土人形として立体化したものです。サイ、ネズミ、キリン、ゾウの全4種。どれも、手のひらにのる小さな人形です。
このプロダクトをつくりながら、伝統工芸や郷土玩具と、福祉施設に通うクリエイターが一緒にものをつくることの意味について、あらためて考えていました。今日はそのことを、少し書いてみたいと思います。
「楽しい」から始まっている
原画が生まれたのは、konst が軽井沢町社会福祉協議会とともに続けているワークショップ「アート・あぷりえ」の時間です。
ワークショップでは、商品にすることを目的につくっているわけではありません。「軽井沢にこんな生き物がいたら」という想像を、好きな紙を選び、ハサミで切ったり、手でちぎったり、ときには支援員の手を借りたりしながら、それぞれが楽しんでかたちにしていく。やり方はひとつではありません。その結果として生まれた切り絵のなかに、思わず手に取りたくなるような生き物たちがいました。
順番としては、まず「楽しい」があって、プロダクトはそのあとからついてきています。私はこの順番がとても大切だと思っています。
土人形も、遊び心から生まれた
土人形の起源は、土器をつくっていた「土師部(はじべ)」が、遊び心で人形をつくり始めたことだと言われています。そこから江戸時代末期から明治時代にかけて、日本各地の暮らしに根づいていきました。
つまり土人形は、最初から「伝統工芸」として生まれたわけではなく、誰かのちょっとした楽しみが、土地の人たちに親しまれ、繰り返しつくられるうちに、その土地のものになっていったものです。
そう考えると、ワークショップで楽しく切り出された生き物が土人形になるという流れは、土人形が本来たどってきた道と、どこか重なって見えます。新しい試みのようでいて、実は郷土玩具のいちばん根っこにある営みに、まっすぐつながっているのかもしれません。
職人の手を通して、切り絵が「土地のもの」になる
北信州の中野市には、京都伏見の流れをくむ「中野人形」と、愛知三河の流れをくむ「立ヶ花人形」という、二つの系統の土人形が今も受け継がれています。異なるルーツをもつ土人形が同じ地域に共存していることから、中野市は「土人形の里」と呼ばれています。
下左:立ヶ花人形「八重垣姫」/下右:中野人形「踊り子」(写真:工房より提供)
KARUIZAWA TROLL では、切り絵の生き物たちのかたちをできるだけそのままに、工房の職人の方に土人形として仕立てていただきました。ハサミで切ったり、手でちぎったりしたからこその輪郭や、その人ならではのプロポーションも、できるだけ残しています。
一枚の紙から生まれた平面のかたちが、土と手仕事を通して、手に取れるものになる。そこには、クリエイターの自由な発想と、長い時間をかけて磨かれてきた職人の技術の両方が入っています。どちらか一方だけでは生まれなかったかたちです。軽井沢で生まれた想像と、中野で受け継がれてきた技。二つの土地が出会って生まれた人形です。仕立ててくださった工房の皆さんに、心から感謝しています。
受け継がれてきた技と、新しい想像が出会う
中野の土人形には、長い時間をかけて受け継がれてきた技と、土地の人たちに親しまれてきた歴史があります。今回、その技のなかに、新しい題材を迎えていただきました。
今回の生き物たちには、既存の型にとらわれない、のびのびとした魅力があります。それが受け継がれてきた技と出会うことで、これまで郷土玩具に縁のなかった人にも届くものになるかもしれない。福祉の側にとっても、工芸の側にとっても、お互いに新しい出会いになる関係でありたいと考えています。
つくった人に、きちんと還元されること
KARUIZAWA TROLL の売上の一部は、原画使用料として軽井沢町社会福祉協議会を通じ、制作に参加したクリエイターへ還元されます。
楽しくつくった切り絵が土人形になり、誰かの手に渡り、その対価がつくった本人に戻っていく。その循環を、きちんと続けていきたいと思っています。
土地のものに「育っていく」ということ
郷土玩具は、つくったその日に郷土玩具になるわけではありません。長く親しまれ、手渡され、その土地の風景のひとつになっていくことで、少しずつ育っていくものだと思います。
KARUIZAWA TROLL も、まだ生まれたばかりです。いつか「軽井沢といえば、この生き物たち」と思ってもらえるような存在に育っていけたら、とてもうれしいです。
クリエイターが楽しいと思ってつくったものが、中野の職人の手を通して土人形になり、土地のものになっていく。その流れのそばにいられることを、ありがたく感じています。
KARUIZAWA TROLL(サイ/ネズミ/キリン/ゾウ 全4種)
各 4,400円(税込)
原画:アート・あぷりえ(軽井沢町社会福祉協議会 × konst)
企画・デザイン:konst
詳しくは Works ページ をご覧ください。