魔法について
イタリアの建築家、インダストリアルデザイナー、エットレ・ソットサスはこう言いました。
「デザインが始まるのは、合理的なプロセスによる改良が終わり、魔法のプロセスによる改良が始まるときである」。
僕はこの“魔法のプロセス”という意味が、最近ようやく少しわかってきたような気がします。ここでいう魔法とは、合理性では説明できない、言語化できない創作のことです。
福祉施設に通う障がいのあるクリエイターと創作ワークショップをしていると、言語化できないような創作の誕生や飛躍に立ち会うことが多くあります。その創作は、魔法のような感動的な瞬間を生み出します。ただ、その魔法を感じるためには、ある条件があると思います。それは、受け手側が、魔法のような美しい創作が生まれることを期待する姿勢です。根拠のない、説明不可能な美しさを信じて期待するという姿勢です。
僕たちは小学生に向けたワークショップもしています。次々と想像の生き物を描いていく男の子がいました。
「どうしてそんなに新しいアイデアが出るの?」と聞いたところ、「頭の中に引き出しがあって、引き出しを開けたら生き物が住んでいるから、それを描いているだけだよ」と答えてくれました。
その創作には根拠も合理性もなく、方法論として他者に伝達することは難しいものです。ただ僕たちは、信じるべき大切な創作だと感じました。
僕たちは、説明のつかない、合理的ではない、障がいのある方や子どもが生み出すような美しさを、より多くの人々が信じることができる社会の実現を目指しています。
不確定なこと、非合理的なこと、理解できないことに期待して信じる姿勢が、魔法のプロセスを見ることができる資格だからです。
その先には、スウェーデンの福祉施設「Formverkstan※」に流れていたような幸福な時間と場所を生み出すことができる可能性を秘めているのではないか。幸福に生きるためのヒントにつながっていくのではないか。そう考えています。その実現には、様々な立場の人々が、説明不可能な美しさの創作の場を楽しみながら共有することだと信じ、ワークショップを中心に据えたデザイン活動をしています。
※Formverkstan:スウェーデン・ヨーテボリの機能支援センター内にある、アートとデザインに特化した福祉アトリエ。知的障がいや精神的な困難を抱える人びとが、プロのクリエイターとともに陶芸やテキスタイル、グラフィックデザインなどの創作活動に取り組んでいる。konstが日本版「創作レシピ」を組み立てる際に、学びの源としてきた北欧の参照モデルでもある。Instagram: @formverkstan