konstが、すでにある景色の上にこれから重ねていきたいこと

渡部 忠

ずっと考えていることがあります。

konstは軽井沢町社会福祉協議会と一緒に「アート・あぷりえ」というワークショップを続けてきました。障がいのある方たちの創作を支え、生まれた原画を商品やアートワークにして販売し、その利益を関わった時間に応じて還元する。うまく完成できたかどうかではなく、参加した時間で分配する。これはkonstにとって、単なる仕組みというより、大切にしている考え方そのものです。

ここから先に書くことは、あくまでkonstというひとつの事業体から見えている景色であり、そこから自分たちが動き始めている、私たち自身の理想の話です。

もともと、開かれた場所でありたかった

konstは、特に意識してきたわけではなく、自然と開かれた形でやってきました。契約のかたちも、分配の考え方も、聞かれればいつも話してきたし、メディアや大学の研究者にも協力してきました。

それに、福祉とアート・デザインを掛け合わせる取り組みは、konstが特別に先進的というわけでもありません。すでに全国には、はるかに大きな規模で、長い歴史を持って実践している施設がいくつもあります。そうした先輩たちの活動から学べることは、まだまだたくさんあるはずです。konstはむしろ、そうした積み重ねの上に、遅れて参加させてもらっている立場に近いと思っています。

それでも、まだつながっていない

気になっているのは、こうした素晴らしい実践がそれぞれの場所で独立して存在していて、お互いのやり方から学び合えるような土壌が、まだ十分にできていないことです。

konstのようなやり方、事業所や社協との関係の築き方、他の地域で育ちつつある福祉×デザインの現場。それぞれは点として存在しているけれど、点のままだと、お互いの情報を知る機会も、そこから学ぶ機会も限られてしまう。

先輩施設の知見も、konstの試行錯誤も、企業の側が持っている経験も、それぞれのやり方として、誰かの参考になるように届けていく。それだけでも十分な気がしています。業種を問わず、企業にもこの場に加わって、一緒に考え、時には互いの仕組みを使ってもらえるような関係が生まれたら嬉しいです。

もちろん、方法をシェアすることや、他の事業所の参考になることよりも、目の前の利用者さんや地域と、じっくり向き合うことを大切にしている活動があるのも、当然のことです。それを何か足りないことだとは思っていません。konst自身も、特別なシェアができているわけではなく、ただそうありたいという理想を持っているだけなのです。

個性は、選び取られていく中で生まれる

これは「みんな同じことをしよう」という話ではありません。むしろ逆です。

施設も、企業も、地域も、それぞれでいいと思っています。無理に混ざり合ったり、同じ場に集まったりする必要はありません。ただ、それぞれのやり方が情報として届き、他の地域や施設、企業が「参考にできる」状態になっていたら、それが一番いいなと思っています。軽井沢のやり方、他の土地のやり方、企業ごとのアプローチ——違っていていいし、その違いがそのまま、誰かの参考になっていく。

konstが大切にしてきた「うまく完成させることよりも、つくる人の喜びに寄り添うこと」という考え方も、誰かだけのものではなく、情報として選び取れる土壌の上で、それぞれの場所なりの形で取捨選択されていくものだと思っています。

まだ始めていない事業所へ、届けたいこと

とくに力を入れたいのが、まだデザインやアートの活動に手を出していない福祉事業所に向けて、私たちのやり方を伝えていくことです。何か特別な正解として押しつけたいわけではなく、数ある方法論のうちのひとつとして、端からご覧いただければと思っています。

ただ、これもkonstだけで担いたいわけではありません。konstが知見を集めるプラットフォームを用意したいわけではなく、それぞれの施設が、無理のない範囲で自分たちのやり方を、それぞれの言葉で発信していけたら。そうやって積み重なった知見に、誰もが気軽に触れられるような土壌の感覚が、少しずつ育っていったらいいなと思っています。

そのとき渡すのは、konstのやり方だけでなくていいと思っています。日本中にあるいろいろなやり方が、自然に目に触れて、その中から選べるような状況が広がっていったらいいなと思います。そうやって情報が行き交うことで、それぞれの基盤の上に、その場所らしい好みやスタイル、個性が自然と生まれてくるはずです。そうやって育った個性は、konstの色を薄めるものではなく、むしろ全体の景色を豊かにしてくれると思っています。

どこが売れても、どこが人気でもいい

正直なところ、この活動の中で、どこの事業所の作品が売れるか、どこが注目を集めるか、というところに、私自身は目を向けるべき大切なポイントがあるとは思っていません。

大事なのは、その土台のところで交わされる、地域のクリエイターと支援員の笑い声が、地域のみなさんに知られていくことだと思っています。売上や知名度は結果でしかなくて、その笑い声が伝わっていくことこそが、この活動がうまくいっているかどうかの一番の手がかりだと思っています。

経営者同士が、現場に立って考える

もうひとつ大切にしたいのが、同じ地域の企業の経営者たちが、事業所のワークショップを互いに手伝い合う光景です。実際、同業の経営者が同じワークショップに顔を揃えることも、少しずつ増えてきました。

支援するという立場だけでなく、自分たちに何ができるだろうかと、一緖に考えてもらえたら嬉しいです。経営者という立場だからこそ見えることを持ち寄って、現場で話し合ってほしい。そして、その実践の場に、業種やセグメントで分け隔てることなく、誰でも呼んでもらえるような関係でありたいと思っています。

「福祉だから安い」に、頼らない関係を

もうひとつ、時間をかけて向き合っていきたいことがあります。福祉に関わる仕事だから、価格は控えめでも仕方ない——そう感じられる場面が、まだあるように思います。

長い間の習慣の中で、気づかないうちにそうなってしまっている面もあるのだと思います。だからこそ、依頼する側の姿勢を、急がず時間をかけて少しずつ調整していきたい。福祉施設に関わるときも、他の仕事と同じように、お互いに価値を認め合える関係を育てていきたいと思っています。

今、konstにできること

正直に言えば、konstだけで、方法論を必要としている誰かに向けて発信していく。それだけでも十分なのかもしれないと思っています。

先輩施設の実践から学び続けること。konstが積み重ねてきた契約や分配の考え方を、必要としている誰かが参考にしやすい形で言葉にしておくこと。海外に学べる前例があれば、それも積極的に取材して、届けていくこと。

まずは足元から。私たち、デザイナー2人がやってきたことを、飾らずに書き残しておこうと思っています。大きな組織でも、華やかな実績でもなく、ただの2人がやってきたことでも、誰かの最初の一歩の参考になるなら、それで十分だと思っています。