軽井沢でデザインスタジオを続けること──この土地が、つくるものに何を与えているか

須長 檀

軽井沢という場所を選んだ理由

「軽井沢 デザインスタジオ」のようなキーワードで私たちを検索してくれる人がいるようです。そういった人たちに伝えたいのは、ここで生まれるデザインが、この土地の性質と深く結びついているということ。

軽井沢という場所は、都市の喧騒からはなれた静けさを持ちながら、同時に多様な文化や人々が行き交う独特の空気感を持っています。
その環境が、konstのブランドとしての独自性をおのずと形づくってきました。

東京から新幹線で一時間余りの距離にありながら、流れている時間の感覚がまったく違う。その差異こそが、私たちにとって大切な創作の条件です。

他者と創る時間、一人で反芻する時間

私たちは、福祉施設に出向いて、障がいのあるクリエイターたちと一緒にワークショップをしながら創作する場所を作り、そこで過ごす時間を大切にしています。誰かと場をともにして、手を動かし、対話しながら何かを生み出していく時間は、デザインの仕事にとってかけがえのない源泉です。
しかし同時に、その体験をひとりで静かに反芻する時間もまた、同じくらい大切だと感じています。

他者との協働によって得たものを、自分のなかでゆっくりと消化し、次の仕事へと結びつけていく。その往復のなかに、私たちのデザインは育まれています。

空っぽの時間が、美しさを連れてくる

朝、鳥の声しかしない森の中で椅子に座って、頭を空っぽにしている時間があります。何も考えていないはずなのに、遅れてやってくるように、美しさとの出会いがある。

あるいは、真っ暗な夜をぼんやりと眺めながらコーヒーを飲んでいたら、ふと、ずっと気になっていた美しさの理由に気づいたりする。

軽井沢という場所は、私たちをほっといてくれます。

「何もしなくていい、ただそこにいていい」という時間を与えてくれる。その空っぽの時間こそが、インスピレーションを待つための余白であり、デザインの核心に触れるための準備なのだと思っています。

「待つ」という行為は、受け身ではありません。それは、次に来るものを信じながら、静かに研ぎ澄まされていく時間のことです。

この土地が与えてくれるもの

軽井沢でスタジオを続けていると、「なぜ東京ではないのか」と聞かれることがあります。答えはシンプルで、この場所でなければ生まれなかったものが、確かにあるからです。

森の静けさ、四季の変化、そして都市からの適切な距離感。それらすべてが、私たちのつくるものに染み込んでいます。軽井沢という土地は、デザインスタジオにとっての制約ではなく、創造の条件そのものです。