みんなのきれいに会いに – 東川「おくすりてちょうをつくろう」

5月16日、北海道・東川町。
BLUE SCHOOL Higashikawaのこどもデザインクラブで、konstは「おくすりてちょうをつくろう」というワークショップをひらきました。

第4回のテーマは「インクルーシブなデザイン」。konstの須長と渡部のふたりで、子どもたちのところへ向かいました。

おくすりてちょうは、医師で作家の稲葉俊郎先生の発案で始まった「karuizawa hospital without a roof(屋根のない病院)」というプロジェクトから生まれた、小さな手帳です。誰かのための、自分のためのおくすりを、描いたり貼ったりするためのもの。軽井沢町地域活動支援センターの、障がいのあるクリエイターのみなさんが、一点ずつ違う柄と色で作っています。同じものが、ひとつもありません。

その日、私たちは軽井沢のクリエイターが作ったたくさんのおくすりてちょうを東川へ持っていきました。シャボン玉、スタンプ、スプレー、スライム。表紙を見ているだけで、これはどうやって作ったんだろう、と手が動きそうになる。まずはそれをみんなで眺めるところから始めました。

これをどう使うかは自由です、と伝えて。決まった正解のないものを目の前にして、子どもたちの目が少し変わったのを覚えています。

それから、ひとつだけお話をしました。君が君自身できれいだと思ったものを、大切にしてね、と。

ワークショップが始まって2割ほど時間が進んだあたりで、みんなのスピードに一気にドライブがかかってきました。あ、今日の子たちは早いぞ。楽しむのが得意だぞ。ふたりで目を合わせて、肩を回しました。こういう日は、こちらが急いで何かを教える必要がありません。ただ、隣で一緒にきれいを探していればいい。

金と白や、ピンクと白を混ぜる子がいました。自分の手のなかで「きれい」が立ち上がっていくのを、その子はじっと見ていました。横で、お母さんが「いつもと違う」と驚いていました。

手をぜんぶ絵の具でカラフルにして、紙の上にダイナミックに描き出す子のとなりでは、お父さんが「すごい!」と声をあげていました。

創作をしているときの子どもの顔は、ふだんの顔と少し違うかもしれません。その「いつもと違う顔」が、会場のあちこちにありました。それを見られたことが、私たちにとっていちばんうれしいことでした。

ワークショップを各地で重ねていて、いつも感じることがあります。軽井沢で、東川で、あるいはほかの地域で。同じワークショップをひらいても、子どもたちが創作に向かう空気は、場所ごとに違うのです。手が温まるまでの時間も違う。この日の東川の子たちのように、すっと早くドライブがかかる場所もあれば、じっくりと時間をかけて入っていく場所もあります。
それは、暮らしている地域の空気や生活習慣によるものなのか。それとも、集まってくる子どもたちが日頃ふれているデザインや表現の環境によるものなのか。おそらく、そのどちらもなのだと思います。けれど、何がどう効いているのかは、一度や二度ではわかりません。同じ場所で回を重ね、いくつもの土地を訪ね、その違いを少しずつ知っていけたら――これはとても興味深い「?」だと、私たちは思っています。ワークショップは、子どもたちにとっての時間であると同時に、私たちにとっての観察と発見の場でもあるのです。

子どもたちは、軽井沢のクリエイターが作ったおくすりてちょうを一冊ずつ持ち帰りました。自分のつくったきれいを誰かにわたし、知らない誰かのきれいを受け取って帰る。一点もののおくすりてちょうが、人から人へと静かに渡っていく。そういう一日でした。

この日の第4回こどもデザインクラブは、わたしたちのワークショップだけではありませんでした。隈研吾建築都市設計事務所による「紙コップで遊ぼう!〜小さなもので大きな世界〜」、そしてデザイン事務所kochiaの荒木孝文さんによる「ちいさなツールボックスを作ってみよう!」。小さなものを積み上げて大きな世界をつくる時間、手を動かしてものづくりの楽しさにふれる時間が、同じ日の同じ場所に並んでいました。

子どもたちの笑顔がこんなにもたくさん生まれたのは、この三つの時間がそろっていたからだと思います。同じ日をともにつくってくださったお二組に、心から感謝しています。

東川で、この世界がもっと広がっていったらいいなと思います。そしてまた、この土地の子どもたちの「きれい」に会いに来たい。

アテンドしてくださったBLUE SCHOOL Higashikawaのみなさん、参加してくれた子どもたちと親御さんたち、司会やボランティアのみなさんに、心からお礼を申し上げます。たのしい一日を、ありがとうございました。