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トークセッション参加レポート「“得意”を美の源泉に、障がい者とデザイナーが共創する創作活動とは」

2024.09.28

2024年9月20日(金)、「“得意”を美の源泉に、障がい者とデザイナーが共創する創作活動とは」と題したトークセッションが、ソニーグループの本社にある多様性を活かした成長の場「PORT」にて開催され、コンスト代表の須長と、コンストのサポートデザイナー(Social Well-being Designer)である稲葉俊郎さんがトークセッションに登壇しました。

本イベントはソニーグループの社内イベントとして二部構成で行われ、第一部では「インクルーシブデザインのアートワークショップ」に焦点を当て、第二部では「ふたりでひとつの絵を描く」をテーマに、ソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)のデザイナー太田様と共に、デザイナー3名のトークセッションが展開されました。

第一部「インクルーシブデザインのアートワークショップ」

第一部では、コンストの自己紹介を含む動画の上映とともに、2023年12月よりSMSとコンストが連携して開始したインクルーシブデザインビジョンのプロジェクトについて、SMSの太田様より説明が行われました。

特に、2024年3月に軽井沢地域活動支援センター で、SMSが障がいのあるクリエイターと共に実施したワークショップの模様を交え、プロジェクトの背景や意義についてお話しいただきました。

会場にはそのときに生まれたクリエイターの原画を元にSMSのデザイナーの方々がアウトプットした数々のモックアップの展示も展開されていました。

2024年3月にSMSが実施されたワークショップの様子は『Cocotame(ココタメ)』に掲載された記事をご参照ください。

Cocotame(ココタメ)
『エンタメの会社がインクルーシブデザインについて考え、取り組んだ結果、発見したこと』

前編 https://cocotame.jp/series/050705/
中編 https://cocotame.jp/series/050707/
後編 https://cocotame.jp/series/050973/

第二部「ふたりでひとつの絵を描く」

第二部では、「ふたりでひとつの絵を描く」というテーマのもと、障がいのあるクリエイターとデザイナーが一体となって作品を制作するプロセスや、その創造性について話し合われました。
また、アール・ブリュット()作品とコンストのアート作品との違いについてもトークが交わされました。

特に強調したいポイントとして、須長が次のようにお話させていただいた点をピックアップします。

「障がい者のアートと聞くとアール・ブリュットを思い浮かべる方が多いと思います。僕自身も活動を始める前にアール・ブリュットの作品をたくさん見てまわり、こんな作品を一緒に作れたらと胸を躍らせました。」

「だけど、(10年以上前に)始めてから分かったことなんですが実際には美術館で個展が開けるようなアーティストというのは本当にわずかなんです。彼らはアーティストとして生まれた天才ですから、支援員が声をかけたり、一緒につくるということは必要はありません。対して、僕らは就労支援を目的にしているということもあって、1%の天才アーティストではなくて、99%の特別な才能に恵まれているわけではない方、より多くの方々に創作をしてもらい、その創作が仕事になる工夫を考えたいと思いました。」

「みなさんの得意な能力をどうやって引き出すことができるか? それぞれのクリエイターの得意を活かせるワークショップを積み重ねていくうちに先ほど見てもらったようなアートワークを生み出せて、さらにそれがプロダクツとして人の手にわたっていけることができたら、デザインやアートという仕事が全国の施設で当たり前の仕事になって欲しいと思っています。」

(※)アール・ブリュット…アール・ブリュット(Art Brut)は、フランス語で「生の芸術」を意味し、専門的な美術教育を受けていない人々、特に障がい者や子どもなどが生み出す独自で純粋な芸術を指します。画家ジャン・デュビュッフェが提唱し、既存の美術の枠にとらわれない自由な表現が特徴です。

さいごに

今回のイベントを通じて、障がいのあるクリエイターと企業デザイナーが共創することの可能性や、インクルーシブデザインの新たな視点が多くの参加者に共有されました。

特に、美とは「一部の才能ある者だけのもの」ではなく、「多様な個性が交差することで生まれる新たな価値がある」ことを改めて感じさせられる内容でした。

今後もこうした取り組みが広がり、より多くの人々がその魅力と可能性を発見する機会が増えることを期待しています。